おカネ学株式会社の お知らせ情報
金融庁長官が日本の資産運用ビジネスにおいて『販売者の論理』が横行している事について警鐘を鳴らしています。現在の投信の99%は積立NISAの投資対象基準に満たないという結果なのです。しかし米国では上位10本のうち8本が基準を満たしています。
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金融庁長官の森信親氏が述べた内容が日本の金融業界の問題点をあぶり出しました。2017年4月7日に『日本の資産運用業界への期待』と題された日本証券アナリスト協会での講演で述べた内容です。その一部を原文通り引用します。なお本稿では長官コメントの引用部分を「 」、それ以外を『 』として表記します。
「積立 NISA の対象となりうる投信は、インデックス投信とアクティブ型投信あわせて約 50 本と、公募株式投信 5406 本の1%以下となりました。 ところが、同じ基準を米国に当てはめてみると、全く異なる結果となります。米国で残高の大きい株式投信については、上位10本のうち8本がこの積立 NISA の基準を満たしています。一方、我が国の残高上位 30本の株式投信の中で、この基準を満たしているのは 29 位に一本あるだけ」なのです。出所:金融庁ホームページ『日本の資産運用業界への期待』日本の公募投信が米国に比べてコスト高であることを、積立NISAの商品選択を行っている専門家が指摘しているのです。
積立 NISA は、年間 40 万円を上限として行う積立投資について、配当・譲渡所得 を 20 年間非課税とする制度です。投資信託や株式運用で利益が出た部分については、通常であれば20.315%の税金がかかります。
しかしNISA、積立NISA,個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)のいずれも非課税で、20.315%がかかりません。制度上の 金額の範囲内であれば、税引き後リターンが改善するので、まずこれらの制度を上手に活用した方が良いといえます。ただし書類提出などで通常の口座開設よりも時間と手間がかかることも付記しておきます。
今回、積立という側面に日が当たった理由を考えてみますと
毎月積立を行うことで、相場が下落している時にはより多く購入ができる、いわゆる『ドルコスト平均法』の仕組みを広く紹介できます。投資家が株価下落局面でも投資を過度に恐れない耐性を身に付け、株式相場の上昇・下落に一喜一憂しない姿勢や、投資はギャンブルとは異なること、投資を体験として身につけることなどを、積立NISAは後押しするでしょう。
積立NISAの対象として、いわゆる『分配型』の投信が今回は除外されました。投資信託を作っている運用業者からは『なぜ顧客ニーズがあるのに、除外されるのか? 』『分配型はダメだという誤解を与えるのでは? 』といった反対意見も出ることでしょう。
積立NISAの目的としては、金融商品を通じて長期の資産形成を、ということでしょう。長期の資産形成という側面ではインカム(配当や利息など入ってくる収入)を再投資して複利で運用する方が効率が良いことは事実です。イメージとしては3%の運用をするケースで、100万円運用して3万円の利益が出たとします。翌年は100万円+3万円の103万円を運用の元本にすると、増えた3万円部分にも3%の運用ができるということです。これを長年積み重ねることで、チリも積もれば山となる様に資産形成に役立つという事です。
しかし、これ以外にも分配型が外れた理由があります。言葉は悪いのですが『タコ足配当』です。
自分の足を食べているタコ、という表現がタコ足の語源です。分配金で受け取っている資金は実は自分自身だったという恐ろしい事柄なのです。
2015年の分配型投信の運用はマイナス3.4兆円であったにもかかわらず、分配金の総額は5.7兆円であったそうです。実際とは異なりますがどんな事柄なのかイメージをしてみます。
元本100で運用して、運用益で5.7を受け取ったわけではありません。元本が100のままでは無いのです。元本は運用損で「100-3.4=96.6」と減少した上に、分配金を払い出したため、96.6-5.7=90.9となってしまった、というイメージなのです。
分配金を沢山受け取りましたが、それは運用で得をした部分ではなく、投資した元本を受け取ったに過ぎないというわけなのです。まさに投資元本をただ、分けて受け取っているだけの『タコ足』です。たくさん受け取っているからトクしていると考えることは認識不足なのです。問題なのは『運用益でない部分を受け取っている』という事実に気づいていない投資家が相当数であろうことです。
なお、全ての分配型がこの形ではありません。海外ETFのインカム型の基本は運用や配当収益の交付で、元本を減らして交付しているものではありません。分配型のすべてが悪い訳ではないのですが、『日本独自のタコ足分配型』というガラパゴス化が問題なのです。
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