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増加する仕組み債トラブルから見る「顧客本位に向けた課題」YouTube動画公開中

仕組み債に関係するトラブルが増えています。
金融庁が業務改善命令を出したり、証券業協会が処分したりする事例がありました。

FINMACに寄せられた金融トラブル380件の内、141件が仕組み債に関する紛争でした。
(FINMAC紛争解決手続き事例2020年1月~2022年12月の2年間)

こうしたトラブルでは「顧客本位の業務運営」から、かけ離れた勧誘も見られます。
顧客本位に向けて改善の動きも見られますが、後手に回ってしまう事例もありました。
仕組み債トラブルから見る「顧客本位に向けた課題」について解説しました。

解説動画、YouTubeにて公開中

2023年6月9日、証券取引等監視委員会は仕組み債の販売で法令違反行為があったとして、

千葉銀行と武蔵野銀行、ちばぎん証券の3社に行政処分を出すように金融庁に勧告を行いました。

6月23日には、金融庁が3社に対して業務改善命令を出しました。

9月20日には、日本証券業協会が3社を処分しました。

処分内容はちばぎん証券に過怠金5000万円、千葉銀行、武蔵野銀行はけん責でした。

このスライドのテキストを拡大したものがこちらです。

証券取引等監視委員会のヒアリングによると、銀行員は「収益目標を達成しづらい」、

「仕組み債は収益効率がよい」、「証券営業員は依頼した銘柄を勧誘していた」と回答しています。

銀行員が証券営業員に伝えた要請・依頼の実例がこちらです。

「出来たらリンク債で1000万円やってほしい」「外株EB債、来週約定で固めてある」と仕組み債の販売を依頼していることがわかります。

更に「2指数リンク債の販売時のバック」を気にする発言もありました。

これは販売時のキックバックを意識していたと思われます。

証券営業員も銀行からの依頼があったことを認識していたことがヒアリングにてわかっています。

「顧客の利益よりも銀行との良好な関係性を維持することを優先してしまった。銀行員の顔色を窺ってしまっていた」という発言もありますが、これは顧客本位と真逆の発言です。

他にも「銀行からの紹介の段階で仕組み債に決まっていた」という発言や、「リスクの説明を強調して話すとにらまれることがあり、後で指摘されることもあった」という発言もヒアリングにて判明しました。

顧客のリスク許容度を無視しており、商品のリスク説明を軽視した対応だと思います。

 

FINMACに寄せられた金融トラブルを調査してみました。

対象期間は2020年1月から2022年12月までの3年分で、合計380記載されていました。

380件の内、仕組み債が占めるものは141と全体の3分の1を超える件数でした。

 

この141件を合計すると、合計28億3818万円もの損害賠償請求が行われていたことがわかります。

ここで示されているのはFINMACに寄せられた部分のみです。

まだ、損失に気づいていない人や、泣き寝入りしてしまった人もいるでしょう。

2020年の8月に当時加入していた東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)で、
顧客本位の業務運営について提言をさせていただきました。

その時提言した方向に進んでいるものもあるが、情報開示等まだ不十分だと感じています。

提言の詳細は下記リンクでも閲覧可能です。

「投資家・顧客ファースト実現に向けて」を東京国際金融機構で提言しました。

提言後、FinCity.Tokyo事務局が、日本証券業協会に提言打診を行いました。

仕組み債のコスト開示やリスク説明の重要性について申し入れを行いました。

2020年当時の日証協の回答としては「仕組み債について現状見直しは考えていない」というものでした。

 

その後金融庁が仕組み債の取組方針について各金融機関に報告を求めました。

その後、日証協は仕組み債についての取組方針を全面的に見直しを行いました。

FINMACで仕組み債に関するトラブルが増加していました。

仕組み債について見直すべき、という提言も行った経緯もありましたが、

後手に回った感は否めないと思います。

 

サービスを提供する側である金融機関の変革が必要だと考えています。

自主管理団体が業界保護の姿勢から投資家保護の姿勢に移ることなど、ノルマ重視の手数料型ビジネスからの脱却は、現在よりも加速させる必要があるでしょう。

 

世界では手数料で収益を得るコミッション型ビジネスから、アドバイザーなどに対して一定の料率で報酬を支払うフィービジネスへの移り変わりが進んでいます。

アメリカでは投資についてアドバイスを行う登録事業者、RIA事業者数が32,177事業者います。

一方で、日本で同様の投資助言業のみを取得している事業者は416事業者のみです。

日本でのアドバイザー普及はまだ世界レベルではないと考えられます

この課題解決には、国民全体の金融リテラシー向上が一つのキーワードになるのではないかと考えられます。

日本銀行の金融広報中央委員会の調査では、

75.7%、4分の3以上が学校での金融教育を受ける機会が無かったと回答しています。

2022年4月より高校での金融教育がスタートしましたが、

教員で「金融教育を受けた」との認識がある割合も8.2%と低い水準です。

米国では家計の57%が株式や投資信託等の有価証券に投資しています。

一方、日本では家計の54%が現預金となっており、投資が身近な存在とは言えない状況です。

国民全体の金融リテラシーが向上し、「投資はトモダチ」との認識が高まることで、

政府が目指す「資産所得倍増」の後押しになるのではないでしょうか。

 

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