おカネ学株式会社の お知らせ情報
英国のEU離脱で為替市場が大きく動きました。急激に円高が進行する際、
外貨運用を始めるには良い機会と考える投資家も多いと思います。
しかし外貨運用を行う時に税金の損益通算の仕組みについて知らないと
損をしてしまうことがあります。為替コストは重要です。簡単な内容からおさらいします。
■外貨定期預金は円預金と違い「元本保証ではない」
預金の特徴は「元本保証」があることです。しかし外貨預金には元本保証が
無いのに預金を名乗っているのです。例えば、米ドル(USD)建ての外貨預金は
「USD通貨での元本の保証がある」というだけで日本円ベースでの元本が
約束されている訳ではありません。
預金と名前が付いているからといって安心してはいけないのです。
為替リスクという大きなリスクを取っていることになるのです。
その証拠に外貨預金は預金保険の対象外となっており、ペイオフで保護はされません。
外貨運用をこれから始める投資家には、まず預金でイメージされる印象を排除して欲しいのです。
もう一度繰り返しますが為替リスクを内包しているのです。
■外貨預金を金融機関が勧める理由は「為替手数料」
外貨預金を金融機関が勧める理由のひとつが為替手数料です。
「為替手数料 > 運用益」となっている場合すらあるのです。
以下の条件から投資家のリターンを考察してみます。
※上記は仮想であり、データの正確性を保証するものではありません
①1000万円を豪ドルへ両替
1000万円÷(84.36+0.95)=約11万7219.55豪ドル
両替に使うTTSは金融機関によって異なります。この事例では、
仲値の為替84.36円+0.95円(為替手数料)=85.31です。
TTSとTTBのどちらを使ったら良いか迷った場合は「投資家が損する方向」
と覚えておけばよいです。円から豪ドルであれば、為替は絶対値が大きい方で、
日本円÷為替=豪ドルとなる計算後の最終豪ドルの値が少なくなる方の値です。
②豪ドルで3カ月運用の利息、税引き前
11万7219.55豪ドル×0.025÷365日×92日=約738.644豪ドル
③豪ドルで3カ月運用の利息、税引後
738.644豪ドル×0.79685=約588.58豪ドル
④3カ月後の豪ドルベースの所持金(元利金)
11万7219.55豪ドル+588.58豪ドル=11万7808.13豪ドル
⑤3カ月後の仲値ベースの日本円換算額
11万7808.13豪ドル×84.36=約993万8293円
おわかりでしょうか。1000万円で運用したものが約994万円で
「為替手数料>運用益」となっています。
運用コストに注意することがいかに大事なのかおわかり頂けると思います。
これは円ベースの評価額の話で、実際に円転すると更に悲惨です。
⑥豪ドルから実際に円転
11万7808.13豪ドル×(84.36-0.95)=約982万6376円
■為替リスクのインパクト
この事例では為替が3カ月前と同じ水準だったらという前提でした。
しかし、為替が大きく動いて円高に進み、74.22円の推移であったらどうなるでしょうか。
117,808.13豪ドル × 74.22 = 約8,743,719円
117,808.13豪ドル × (74.22 -0.95) = 約8,631,801円
ここまでで、為替手数料 > 運用益 となり得ることを例示しました。
為替コストが高い投資は避けるべきです。
そして為替の変動が及ぼす影響が大きいこともご理解頂けたと思います。
しかしリスクは損得両方向を示すものであり、今後の為替の円安方向を予想し、
そのリスクを許容できる投資家は為替益による収益機会もあります。
■外貨預金の為替差損は
外貨預金の税金は利息部分について20.315%(2016年6月現在)の源泉徴収となります。
為替差益については「雑所得」として総合課税となることから、富裕層の高税率負担者
にとっては「雑所得」の為替差益計上は負担が大きいと考えられます。
そして為替差損が発生した場合は、「他の雑所得」としか損益通算ができません。
なお、FX利用の利益や、証券関連の利益とは損益通算ができません。
■為替の損益を含めて株式の譲渡損益と計上できる可能性も
海外ETFや外国株を活用すると為替の含み損益の姿が異なってきます。
米国株式の譲渡損益の計算は、ある証券会社のHPの説明によると
売却時の円換算した受払金額 - 購入時の円換算した受払金額
・売却時はドル建て金額 × 売却約定時のTTBレート
・購入時はドル建て金額 × 購入約定時のTTSレート
となっています。
円建て換算を行うプロセス等が面倒に思えるかもしれませんが、為替の損益を含めて
株式の譲渡損益と計上できる可能性があります。
そして譲渡益の税率は20.315%(2016年6月現在)です。
富裕層の所得税と比較した場合のメリットの大きさを考えるべきです。
そして他の国内の証券などとの譲渡損益との損益通算も可能になる場合があります。
外貨預金を勧める銀行員でこの内容を知っている者は少数だと考えます。
仮に知っていたとしても、わざわざ投資家に教えることは期待できません。
富裕層にとって自分のケースに当てはまる、有益な情報を提供してくれる
パートナーがいることで、運用リターンが左右する可能性も期待できるかもしれません。
(オリオン税理士法人監修:本件は一般的な税務の考え方を示したものであり、具体的な税金の事柄につきましては税理士、会計士等税務専門家にご確認下さい。筆者や掲載メディアは本件の個別の税務に対する質問や相談には法令遵守の立場から一切回答いたしません。ご了承下さい。)